グランプリファイナルでの明暗
グランプリファイナルのショートプログラムで、千葉選手は自己ベストとなる77.27点をマークし、堂々の首位発進を果たしました。表情豊かで躍動感あふれる演技に、会場は大きな拍手に包まれました。しかし、勝負の分かれ目となったフリースケーティングでは、持ち味の安定感を欠く結果となってしまいます。

序盤の3回転ループ、3回転サルコーと連続で転倒。その後も演技全体を通じてジャンプでのミスが響き、フリーの得点は伸び悩みました。結果として総合210.22点で5位に終わり、代表選考において優位に立てる「日本勢上位2人」にも入れませんでした。「今季一番の屈辱」「今まで感じたことがない重圧だった」と、千葉選手自身が振り返るように、大舞台での緊張と重圧が演技に影響を及ぼした形となりました。 フリー演技後の一夜明け取材では、涙ながらに心境を語りました。「自分に悔しがる権利もない」「こんなミスは2度と許されない」。厳しい言葉で自分を戒める千葉選手の姿からは、並々ならぬ覚悟が感じられました。
全日本フィギュアスケート選手権始まる
2025年12月19日、東京・国立代々木競技場第一体育館で、第94回全日本フィギュアスケート選手権が開幕しました。この大会は、2026年2月に開催されるミラノ・コルティナ冬季オリンピックの日本代表最終選考会を兼ねており、男女各3人、ペア2組、そして団体戦要員としてアイスダンス1組の代表が決定される、まさに4年に一度の特別な舞台となります。 熾烈な代表争いが予想される中、とりわけ注目を集めているのが、木下グループ所属の千葉百音選手(20歳)です。昨季の世界選手権で銅メダルを獲得し、自らオリンピック出場3枠獲得に貢献した千葉選手は、今季のグランプリシリーズで2連勝を飾り、順調なスタートを切りました。しかし、12月上旬に名古屋で行われたグランプリファイナルでは、予想外の展開が待ち受けていました。

全日本選手権への覚悟
グランプリファイナルでの失速により、千葉選手は現在、オリンピック代表争いで3番手の位置にいるとされています。GPファイナルで日本勢上位2人に入った17歳の中井亜美選手(TOKIOインカラミ、2位)と、3度の世界選手権優勝を誇る坂本花織選手(シスメックス、3位)がリードする状況です。
しかし、日本スケート連盟の選考基準によれば、全日本選手権の優勝者は1人目の代表に自動的に決まります。つまり、千葉選手にとってこの全日本選手権は、一発逆転でオリンピック切符を手にできる最後のチャンスなのです。
18日に行われた公式練習では、千葉選手は「今までのスケート人生の中で一番結果が重視される大会。自分の滑りに集中して、一心不乱にいきたい」と、自分に言い聞かせるように覚悟を語りました。フリーの曲をかけた練習では2度転倒する場面もありましたが、「足がコントロールできるかの確認だった。体の動きを見ながら修正することはできた」と冷静に分析。悲観はしていません。
グランプリファイナル後の2週間、千葉選手は「本番で一番いい演技ができるように、ということだけを考えて練習してきた」と振り返ります。修正を重ね、調整を進めてきた日々。そして迎えた全日本選手権では、「全身全霊でいくしかない」「一心不乱にいく」と、強い決意を示しています。

熾烈を極める女子代表争い
女子の代表争いは、まさに百花繚乱の様相を呈しています。坂本花織選手は大会5連覇を目指すとともに、優勝すればオリンピック一発内定を狙える立場にあります。今季のシーズンベストは世界でも一番手であり、経験と実績から最も代表に近い位置にいると言えるでしょう。
一方、GPファイナル2位と大躍進を遂げた17歳の中井亜美選手は、「オリンピックは絶対に逃さない」と強い意志を表明しています。トリプルアクセルを武器とする中井選手の勢いは侮れません。また、渡辺倫果選手や、ジャンプ力と4回転を武器にする住吉りをん選手、さらにはジュニアながら22年ぶりの快挙を狙う17歳の島田麻央選手など、実力者が揃い踏みしています。
千葉百音の強みと巻き返しへの期待
千葉選手の最大の強みは、これまで培ってきた安定感と表現力です。2024年四大陸選手権では優勝を飾り、2025年世界選手権では銅メダルを獲得。国際大会での実績は確かなものがあります。今季のグランプリシリーズでも2連勝を果たしており、調子が良い時の千葉選手の演技は圧巻です。
昨季の世界選手権では、自らオリンピック出場3枠獲得に貢献しました。「自分でつかんだ枠を物にする」──この思いが、千葉選手を突き動かしています。グランプリファイナルでの悔しさをバネに、全日本選手権では本来の力を発揮できるか。大舞台での重圧を乗り越え、一心不乱に滑り抜けることができれば、巻き返しは十分に可能です。 2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックへの切符をかけた戦い。千葉百音選手の巻き返しなるか。全日本フィギュアスケート選手権の幕が上がりました。この大会で、誰がオリンピックの夢を実現するのか。氷上の戦いから目が離せません。
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