台北金馬映画祭でNETPAC賞受賞、日本人監督として史上初の快挙
2025年11月19日、台湾で開催された第62回台北金馬映画祭において、お笑い芸人のゆりやんレトリィバァさんが初監督を務めた映画『禍禍女(まがまがおんな)』が、NETPAC賞(Network for the Promotion of Asian Cinema Award)を受賞しました。この受賞は、日本人監督として史上初の快挙となり、映画界に新たな歴史を刻むこととなりました。
台北金馬映画祭は、アジア映画界において最も権威ある映画祭の一つであり、「NETPACコンペティション」部門では、アジア映画の新たな才能を顕彰することを目的としています。ゆりやんレトリィバァの作品が、この栄誉ある賞を受賞したことは、彼女の映画監督としての才能が国際的に高く評価されたことを意味します。

世界22カ国の映画祭で4冠達成、『禍禍女』の国際的評価
『禍禍女』は、台北金馬映画祭だけでなく、世界各地の映画祭で高い評価を受けています。これまでに世界22の国際映画祭に正式出品・ノミネートされ、すでに4冠を達成しています。
具体的には、スペインの第58回シッチェス・カタロニア国際映画祭、イタリアの第8回モンスターズ・ファンタスティック映画祭の国際長編映画コンペティション部門で最優秀作品賞を受賞しました。さらに、第45回ハワイ国際映画祭では「ハレクラニ・ヴァンガード・アワード」を受賞しています。この賞は、映画芸術の未来を切り拓く新進気鋭の映画人に贈られる名誉ある賞であり、過去には世界的な映画監督も受賞してきた歴史があります。
また、カナダのモントリオール・ニュー・シネマ国際映画祭でも受賞を果たしており、アメリカのハリウッド・フィルム・フェスティバルでも上映され、観客から爆笑と好評を博しました。海外メディアからは「観客を魅了する”ヤバい映画”」「愛が映画にうまくアダプトされている」など、高い評価が寄せられています。
『禍禍女』の作品内容と制作背景
『禍禍女』は、ゆりやん自身の実際の恋愛体験や感情をもとに作り上げた”狂気の恋愛映画”です。主人公は、ある男性に想いを寄せる美大生・上原早苗(南沙良主演)で、彼女の恋愛に対する激しい感情と葛藤が描かれています。
この作品の制作が始まったきっかけは、2021年にゆりやんさんがテレビ番組で「次に挑戦したいこと」として「映画監督」と発言したことでした。その発言をたまたま見たK2 Picturesの高橋大典プロデューサーがコンタクトを取り、企画が始動しました。そして2024年5月、フランス・カンヌ国際映画祭で正式に映画監督デビューを発表し、「ユリント・イーストウッド(Yuriant Eastwood)になります」と冗談交じりにコメントし、監督としての意気込みを見せました。
キャストには、主演の南沙良をはじめ、前田旺志郎、アオイヤマダ、高石あかり(NHK朝ドラ「ばけばけ」のヒロイン)、鈴木福、斎藤工、田中麗奈など、豪華な俳優陣が名を連ねています。映画は2026年2月6日に全国公開される予定です。
日本での評価と期待
日本国内でも、『禍禍女』への期待は非常に高まっています。海外映画祭での受賞実績が相次いで報道され、特に台北金馬映画祭でのNETPAC賞受賞は、日本のメディアでも大きく取り上げられました。試写会に参加した関係者からは、「ゆりやん監督の独創的な感性が爆発している」「お笑い芸人としての経験が映画表現に活かされている」といった声が上がっています。
また、海外映画祭での観客の反応を収めた特別映像も公開されており、スペインやイタリア、ハワイなど各地で観客が爆笑し、スタンディングオベーションが起こる様子が映し出されています。ゆりやん監督自身も各映画祭で現地の言葉で挨拶するなど、国際的な映画人としての姿勢を見せています。
日本公開に向けて、映画業界関係者からは「これまでにない新しい視点の恋愛映画」として注目されており、興行面でも大きな期待が寄せられています。
女性芸人として初の映画監督、その意義とは
ゆりやんレトリィバァが女性芸人として初めて長編映画の監督を務めたことは、日本のエンターテイメント業界において非常に大きな意義を持っています。

まず第一に、日本映画界におけるジェンダーギャップの課題を浮き彫りにします。日本映画界の制作現場におけるジェンダー調査によれば、2022年に劇場公開された日本映画の監督613人のうち女性はわずか68人で、全体の11%にとどまっています。さらに、2000年から2020年の21年間で興行収入10億円以上の実写邦画作品における女性監督の割合は、わずか3.1%という厳しい現実があります。
このような状況の中で、ゆりやんレトリィバァさんが映画監督としてデビューし、しかも世界的な評価を得たことは、日本映画界に新たな風を吹き込む可能性を秘めています。特に、お笑い芸人という異なるバックグラウンドを持つクリエイターが映画監督として成功したことは、映画制作への多様な参入経路を示す事例となります。
第二に、女性芸人のキャリアパスの多様化を示しています。ゆりやんは、お笑い芸人としての活動に加えて、俳優、ラッパー、声優、ラジオパーソナリティ、YouTuber、そして映画監督と、多方面で才能を発揮してきました。2017年には「THE W」第1回大会で優勝し、2021年には「R-1グランプリ」でも優勝を果たすなど、お笑い芸人としても確固たる地位を築いています。2019年にはアメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に挑戦し、国際的にも注目を集めました。
このような多才な活動は、女性芸人が単なる「お笑い」の枠にとどまらず、総合的なエンターテイナーとして活躍できることを証明しています。特に、映画監督という創作の最高責任者としてのポジションを獲得したことは、女性芸人のキャリアの可能性を大きく広げるものです。
第三に、異なる表現領域の融合による新しい映画表現の可能性を示唆しています。お笑い芸人としての経験は、タイミング、リズム、観客の反応を読む力、そして何よりも「笑い」と「感情」を同時に扱う能力を養います。これらのスキルは、映画制作において非常に重要な要素です。『禍禍女』が海外映画祭で「観客を魅了する」と評価された背景には、ゆりやん監督のお笑い芸人としての経験が大きく影響していると考えられます。
第四に、日本のクリエイティブ産業における女性リーダーシップの象徴としての意義があります。映画監督は、大規模なプロジェクトを統括し、多くのスタッフやキャストをまとめ上げるリーダーシップが求められる職業です。女性がこのポジションで成功を収めることは、他の分野においても女性リーダーの活躍を後押しする力となります。
さらに、ゆりやんさんは2024年に活動拠点をアメリカのロサンゼルスに移しており、グローバルな視点で活動を展開しています。中学2年生の時に映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見て主演のマイケル・J・フォックスに憧れ、「将来はアメリカに行こう」と決めたという彼女の夢は、着実に実現しつつあります。このような国際的な活動は、日本の女性クリエイターが世界で活躍するロールモデルとなっています。
まとめ
ゆりやんレトリィバァさんの映画監督デビュー作『禍禍女』が、台北金馬映画祭でNETPAC賞を受賞し、世界各地の映画祭で4冠を達成したことは、単なる個人の成功物語にとどまりません。それは、日本映画界におけるジェンダーギャップの課題に一石を投じ、女性芸人のキャリアの可能性を広げ、異なる表現領域の融合による新しい映画表現の可能性を示すものです。 日本映画界において女性監督の割合がわずか11%という現実がある中で、お笑い芸人という異なるバックグラウンドを持つ女性クリエイターが国際的な評価を得たことは、映画制作への多様な参入経路を示す重要な事例となります。2026年2月6日の日本公開に向けて、『禍禍女』がどのような反響を呼ぶのか、そしてゆりやんレトリィバァさんが今後どのような作品を生み出していくのか、大きな期待が寄せられています。
ゆりやんレトリィバァさんについては、デビューから独特の芸を持っていると感じていましたが、ここまで多才な人物だとは思いませんでした。男女関係なくゆりあんさんの才能がこれからどのような分野に広がって行くのか楽しみです。


コメント