11月26日は「ペンの日」です。
これは昭和10年(1935年)11月26日に日本ペンクラブが創立されたことに由来しています。
ペンと聞くと、多くの人はボールペンを思い浮かべるかもしれません。しかし私にとってペンといえば、まず万年筆が頭に浮かびます。
万年筆に憧れるようになったのがいつ頃だったのか、はっきりとは覚えていません。
思い返してみると、中学生の頃、夏目漱石や太宰治の小説に夢中になっていた時期がありました。
当時の作家たちは、原稿用紙に向かい、万年筆で作品を書いていました。
原稿用紙の上を万年筆が滑る音や、インクで文字を紡いでいく姿を想像すると、それだけで文学の世界に近づけるような気がしたものです。
万年筆に漠然とした憧れを抱き始めたのは、その頃だったのかもしれません。
初めて買った万年筆

初めて万年筆を手にしたのは社会人になってからでした。
購入したのは、セーラー万年筆の「スリムミニ」です。
一般的な万年筆より少し短く、丸みを帯びた可愛らしいデザインが気に入りました。
決して高価な万年筆ではありませんでしたが、自分で初めて買った万年筆ということもあり、今でも印象に残っています。
当時は手紙を書いたり、メモを取ったりするだけでも楽しく感じました。
ボールペンとは違い、ペン先からインクが流れ出て文字になる感覚が新鮮だったのです。
趣味の文具箱との出会い
その頃から文房具にも興味を持つようになりました。
特に楽しみにしていたのが「趣味の文具箱」という雑誌です。
誌面には世界中の万年筆が紹介されており、毎号のように新しいモデルが掲載されていました。
モンブランやペリカン、アウロラ、デルタなど、名前を聞くだけで憧れるようなブランドばかりです。
何十万円もする万年筆や、限定生産の特別モデルを見ながら、
「いつかこんな万年筆を使ってみたい」
と思っていました。
もちろん簡単に買えるものではありません。
それでも雑誌をめくりながら眺めているだけで楽しい時間でした。
今思えば、その頃から万年筆は筆記具というよりも工芸品や宝飾品のような存在になっていたのかもしれません。
父の遺品整理で見つかった万年筆

その後、父が亡くなり遺品整理をしていた時のことです。
引き出しの奥から数本の万年筆が見つかりました。
それがモンブランやペリカンの万年筆でした。
私にとっては雑誌の中でしか見たことがない憧れの万年筆です。
父がどんな思いで使っていたのかは分かりません。
仕事で使っていたのか、大切に集めていたのか、それとも誰かから贈られたものだったのか。
今となっては聞くことができません。
父の遺品整理で見つかった万年筆には、購入時のケースや説明書がきちんと残されていました。
その様子を見ると、父が大切に保管していたことが伝わってきます。
しかし、モンブランの万年筆をよく見ると、ペン先が摩耗しており、紙に引っ掛かる状態になっていました。
結局、私はペン先を交換して使うことになりました。
ケースや説明書を残しながらも、ペン先が傷むほど使い込まれていたのです。
その姿からは、父が万年筆を単なる持ち物としてではなく、日常の道具として長年愛用していたことが感じられました。
その万年筆を手に取った瞬間、不思議な温かさを感じました。
父が使っていた万年筆を自分が受け継ぎ、今も使っている。
単なる筆記具ではなく、父との思い出が詰まった品になっています。
万年筆は工芸品でもある
万年筆の魅力は、書くだけではありません。
眺める楽しみもあります。
世界には何百万円もする万年筆があります。
貴金属や宝石を使ったもの、芸術作品のような装飾が施されたものもあります。
日本でも輪島塗や蒔絵など、日本の伝統工芸を取り入れた万年筆が作られています。
もはや筆記具という枠を超えた工芸品と言ってもよいでしょう。
私自身、万年筆売り場でショーケースを眺めているだけで楽しくなります。
デルタ・ドルチェビータとの出会い

父の万年筆を使うようになった後、自分でも一本購入しました。
イタリアのデルタ社が製造していた「ドルチェビータ」です。
この万年筆を選んだ理由は、何と言っても鮮やかなオレンジ色の軸でした。
樹脂を削り出して作られた独特の色合いは、一目見ただけで心を奪われました。
書くための道具でありながら、机の上に置いておくだけでも美しい。
そんな存在です。
今でもお気に入りの一本です。
万年筆の魅力を感じる瞬間
万年筆の魅力は、文字を書いた瞬間にあります。
ペン先が紙の上を滑る感触。
インクが流れて文字になる感覚。
ボールペンとは違う独特の書き味があります。
ゆっくり文字を書くことで、不思議と気持ちも落ち着きます。
最近はパソコンやスマートフォンで文章を書くことが増えました。
それでも時々万年筆を取り出して文字を書くと、手書きの良さを改めて感じます。
まとめ|万年筆で広がる楽しみ
万年筆は単なる筆記具ではありません。
書く楽しみがあり、眺める楽しみがあります。
さらに私にとっては、父との思い出をつなぐ大切な存在でもあります。
ペンの日をきっかけに、久しぶりにお気に入りの万年筆を手に取ってみるのも良いかもしれません。
ゆっくり文字を書く時間の中に、普段忘れている豊かさを見つけられるような気がします。


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