洞窟や坑道の中へ入ると、外とはまったく違う世界が広がっています。
ひんやりした空気、響く水の音、ヘッドライトだけが照らす暗闇――。
長い年月をかけて自然がつくり出した鍾乳洞や、人の手で掘り進められた金山・銀山の坑道には、独特の静けさと神秘的な雰囲気があります。
今回は、これまで実際に歩いた洞窟や坑道の中から、特に印象に残っている場所を紹介します。
秋芳洞(山口県)

小学生の頃、一度行った記憶がある秋芳洞。
今回は、何十年ぶりかに娘と訪れました。
駐車場に着いたのは朝9時頃。まだ観光客は少なく、車もまばらです。
秋芳洞入口へ向かう遊歩道は、朝の霧に包まれて幻想的な雰囲気でした。下には清流が音を立てて流れ、その先に巨大な洞窟の入口が見えてきます。
洞窟の中へ入ると、一気に空気がひんやりします。
照明に照らされた鍾乳石は、不思議な形をしていて、「大黒柱」「千畳敷」「傘づくし」など、それぞれ名前が付けられています。
しばらく歩いて行くと、広い空間に出ました。思った以上に観光客が多く、地底の巨大空間に人の声が響いています。

途中にある「黄金柱」の場所にはエレベーターがあります。
小学生の頃、このエレベーターに乗った記憶だけは、今でも鮮明に残っていました。
ここから地上へ上がり、秋吉台ジオパークセンターへ向かいます。
展望台からは、秋吉台の広大な草原が見渡せます。カルスト台地の風景を眺めながら飲むコーヒーは格別でした。
帰りは、黒谷口から再び洞窟へ入ります。
トンネルを抜け、「龍の抜け道」を通ると、再び黄金柱の場所へ出ました。
戻る頃には観光客もかなり増えていて、入口周辺のお土産店や飲食店にも活気が出ています。
朝の静かな秋芳洞と、昼に向かって賑わっていく観光地の雰囲気。その両方を楽しめた一日でした。
溝ノ口洞窟(鹿児島県)

溝ノ口洞窟を知ったきっかけは、以前買ったパワースポットカレンダーでした。
その話を職場の同僚にしたところ、偶然にも、その同僚が鹿児島へ転勤することになります。
「鹿児島へ遊びに来たら案内しますよ」
そう言ってくれていたので、鹿児島旅行をした時に連れて行ってもらいました。
洞窟の入口は大きく、中へ入ると奥はかなり広くなっています。
しかし途中で右へ曲がっているため、奥には光が届かず真っ暗です。
同僚が備え付けの懐中電灯を照らしてくれました。
洞窟の天井は高く、想像以上に奥行きがあります。
静まり返った空間には、どこか神聖な雰囲気がありました。
奥には祭壇も祀られていて、昔から特別な場所として大切にされてきたのでしょう。
これは桜島の溶岩で形成された洞窟だそうです。
何のパワースポットなのかは今でもよく分かりません。
しかし、暗い洞窟の静けさと独特の空気感は、今でも強く印象に残っています。
鯛生金山(大分県)

久住登山の帰りに日田方面を通るたび、「鯛生金山」の看板が気になっていました。
ある日、実際に立ち寄ってみることにしました。
坑道入口へ向かって歩いて行くと、前方に大きなトンネルがあります。
近づくにつれ、クーラーよりも冷たい風が流れてきました。
薄暗い坑道の中には、金山の歴史や採掘作業の様子が展示されています。
マネキンを使った再現展示は意外とリアルで、当時の過酷な労働の様子が伝わってきます。
古いトロッコや機械も並び、まるで映画の世界のようでした。
夢中になって歩いているうちに、周囲には誰もいなくなっていました。
静まり返った坑道の中で、どこかから水の流れる音だけが聞こえています。
奥へ進むと、坑道はさらに狭くなり、右へ左へと曲がりながら続いています。
曲がり角で突然リアルなマネキンが現れ、思わず驚かされました。
出口へ近づくにつれ、少しずつ外の暖かい空気を感じるようになります。
展示を見ながら歩くだけではなく、実際に地下の坑道を探検しているような気分になれる場所でした。
石見銀山(島根県)大久保間歩

石見銀山は、以前から一度行ってみたい場所でした。
世界遺産として有名ですが、「大森の町並み」が残っていることを知り、ますます興味を持ちました。
高速道路を使わず5時間ほどかけて、石見銀山世界遺産センターへ到着します。
当初は、有名な「龍源寺間歩」を見学する予定でした。
しかし、センター前で観光案内をしていた女性に話を聞くと、「大久保間歩」のガイドツアーが30分後に始まるとのこと。
大久保間歩は、ガイドツアーでしか入れない特別公開の坑道でした。
少し迷いましたが、せっかくなので参加することにしました。
参加者は沖縄から来た女性二人と、大阪から来た女性一人。そして私の計5人です。
ガイドの長尾さんから、ヘルメット・ヘッドライト・長靴を受け取り、大久保間歩へ向かいます。
ここは、ほとんど近代的な整備が行われていません。
世界遺産のため、大きく手を加えることができないそうです。
ヘッドライトを点けて坑道へ入ると、上からは水滴が落ち、足元には水が溜まっています。
時々立ち止まりながら、長尾さんが当時の採掘について説明してくれました。
奥へ進み、鉄の階段を上ると、「福石」と呼ばれる巨大な空洞に出ます。
銀鉱石が集中して採れた場所で、大規模に掘られた跡がそのまま残っていました。
見学後は、大森の町並みを散策します。
石州瓦のオレンジ色の屋根が続く風景には、どこか懐かしい空気がありました。
偶然参加した大久保間歩ツアーでしたが、あとから振り返ると、本当に行って良かったと思える体験でした。
青龍窟(福岡県)

平尾台には、観光化された鍾乳洞だけでなく、一般公開されていない洞窟も数多く存在します。
そのひとつが「青龍窟」です。
たまたま立ち寄った道の駅で見つけた地域雑誌にガイドツアー募集が載っていて、思わず申し込みました。
参加者は26人。ガイドを含めると、平均年齢は67歳くらいだったと思います。
入口のドームには、修験道の名残である祭壇や灯籠があります。
ヘッドライトを点け、狭い入口から地下へ下りて行きます。
洞窟の中はひんやりしていて、足元は湿っています。
ヘッドライトの光が石灰岩に反射していました。
滑りやすそうに見えますが、ざらざらした石灰岩は意外と滑りません。
低い天井が続き、腰をかがめながら進んで行きます。
それでも時々、ヘルメットを天井にぶつけてしまいます。
地下の川を渡り、冬眠中のコウモリを起こさないよう静かに進みます。
まるで秘境探検そのものでした。
後ろの方では、ヘルメットをぶつける音や、コウモリに驚く声が聞こえてきます。
途中で「暗闇体験」として全員のヘッドライトを消すと、本当に何も見えなくなりました。
完全な闇です。
しばらく進むと、前方が少し明るくなってきます。
坂を上ると、再び入口のドームへ戻ってきました。
地上へ出た時、外の光がとても眩しく感じられたのを覚えています。
まとめ
洞窟や坑道には、地上とは違う時間が流れているように感じます。
長い年月をかけて作られた鍾乳洞。
人の手で掘り進められた鉱山跡。
修験者たちが歩いた地下空間。
そこには、静けさや暗闇だけではなく、人の記憶や歴史も残っていました。
地底に広がる別世界を歩く体験は、今でも強く印象に残っています。


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